角田光代著「八日目の蟬」(中公文庫)心が震えるサスペンス!小説も映画も泣ける!ネタバレ

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皆さん、こんにちは!
本日はブックレビューです。

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角田光代著「八日目の蟬」(中公文庫)

最近、書店に行くと、「八日目の蟬」が平積みにされていたんですね。

え?
なんでと思いました。
かつて読んだ古い文庫本ですから。
調べてみると、角田光代さんの『八日目の蟬』が「ほな西へいこか本大賞」(イコカ本大賞)を受賞したのです。

この賞は本屋大賞実行委員会とJR西日本が主催で、”読むと西エリア(関西・北陸・せとうち・山陰・九州)のどこかへ旅にでかけたくなる日本の「文庫本」小説”を決定する文学賞です。栄えある大賞です。
舞台は「小豆島」ですからね。
そこで今回はブックレビューを紹介です。
ネタバレあります。

角田光代著「八日目の蟬」小説も映画も泣ける!

写真引用:小豆島・近畿日本ツーリスト

最近、また目を通して読みました。

本作は直木賞作家の角田光代さんが全力で書き上げた、心が揺さぶられる傑作長編です。
物語は不倫相手の赤ん坊を誘拐し、東京から名古屋、小豆島へ。
女たちにかくまわれながら逃亡生活を送る希和子と、その娘として育てられた薫。偽りの母子の逃亡生活を描いています。

そして成長した薫(実際は恵理菜)の視点でも描かれていますね。

逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか……。心ゆさぶるラストまで息もつがせぬ傑作長編。第二回中央公論文芸賞受賞作。〈解説〉池澤夏樹

当然ですが、4年ほどの逃亡生活を経て、希和子は逮捕されますが、薫が無邪気でかわいく、逮捕されずに幸せになって欲しいと願ってしまいます。

書き出しはこんな感じです。

ドアノブをつかむ。氷を握ったように冷たい。その冷たさが、もう後戻りできないと告げているみたいに思えた。
平日の午前八時十分ころから二十分ほど、この部屋のドアは鍵がかけられていないことを希和子は知っていた。なかに赤ん坊を残したまま、だれもいなくなることを知っていた。

希和子は赤子を誘拐するのですが、抱きかかえると、「赤子が笑った」という表現があって、
深く感じ入りましたね。

幼少の頃、父の愛人だった女性(希和子)に誘拐され、育てられた過去を持つ恵理菜。彼女は、希和子の逮捕により、4歳の時に実の両親の元に戻ります。
しかし、誰にも心を開けないまま、大学生に。そんなある日、自分が不倫相手の子を妊娠したことを知ります。恵理菜は、揺れ動く思いの中で、希和子と過ごした過去と向き合うようになるのです。そして小豆島へ。

八日目の蝉の意味は?

この意味、気になりますよね。
作者はこう書き綴っています。
(蝉は地上に出て7日目で死んでしまうという前提です)

「七年土のなかにいて、外に出て七日目に死んでしまうという蝉の一生を。真偽のほどはわからないが、私もはじめて聞いたときはショックを受けた」

 

「前に、死ねなかった蝉の話をしたの、あんた覚えてる? 七日で死ぬよりも、八日目に生き残った蝉のほうがかなしいって、あんたは言ったよね。私もずっとそう思ってたけど」
千草は静かに言葉をつなぐ。「それは違うかもね。八日目の蝉は、ほかの蝉には見られなかったものを見られるんだから、見たくないって思うかもしれないけど、でも、ぎゅっと目を閉じてなくちゃいけないほどにひどいものばかりでもないと、私は思うよ。」

原作を読んだあとで、映画も観ましたが、感動的で泣けてきましたね。

井上真央、永作博美の主演。
自らが母親になれない絶望から、希和子(永作)は不倫相手の子を誘拐してわが子として育てる。4歳になり初めて実の両親の元に戻った恵理菜(井上)は、育ての母が誘拐犯であったと知り、心を閉ざしたまま成長する。やがて21歳になった恵理菜は妊娠するが、その相手もまた家庭を持つ男だった……。(映画解説文)
劇場公開日:2011年4月29日

映画で印象的だったのは、刑事に囲まれ逮捕される瞬間。子どもは刑事たちに保護されます。
そのときの永作博美さんのセリフ。
その子はまだ朝ごはんを食べていないんです。

映画のオリジナルかと思ったけど、原作にもちゃんとあります。

成人した恵理菜がかつて暮らしていた小豆島を訪ね、その瞬間を思い出すシーン。小説ではこう書かれています。

そうして私は、十七年前の港で野々宮希和子が叫んだ言葉をはっきりと思い出す。
その子は朝ごはんをまだ食べていないの。
そうだ、彼女は私を連れていく刑事たちに向かってたった一言、そう叫んだのだ。
その子は、朝ごはんを、まだ食べていないの、と。
自分がつかまるというときに、もう終わりだというときに、あの女は、私の朝ごはんのことなんか心配していたのだ。なんて―ーなんて馬鹿な女なんだろう。私に突進してきて思い切り抱きしめて、お漏らしをした私に驚いて突き放した秋山恵津子も、野々宮希和子も、まったく等しく母親だったことを、私は知る。

そうなんです。
薫は驚いてお漏らしするのですが、このシーンも印象に残ってますね。

小豆島での希和子と薫の生活があまりにも愛に溢れ、自然も素晴らしかったので、このまま警察に見つかりませんようにとハラハラしながら、映画も観ていましたが……。

直木賞作家の真骨頂でしょうね。素晴らしい結末とも言えます。

ちなみにずいぶん昔に小豆島へは観光で行ったことがありますけど。
また行きたくなっちゃいますよ。

まとめ

本日は角田光代著「八日目の蟬」のブックレビューをお送りました。泣ける小説、泣ける映画とも言えますね。誘拐に至る動機も違和感がなく、小豆島での暮らしぶりも、素敵でした。

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