若桜木虔著「プロ作家になるための四十カ条」(ベスト新書)はどんな内容か?

小説講座本

皆さま、こんにちは。

ブックレビューのお時間です。
本日はこの本のご紹介です。

若桜木虔著「プロ作家になるための四十カ条」(ベスト新書)

作者の若桜木虔氏は、小説家養成講座の講師を務め、たくさんの生徒をプロデビューさせています。
『プロ作家養成塾』『プロの小説家になる作家養成塾』など、
小説の指南書を多数出版されています。すべて小説を書く手引きというか、
新人賞を狙う参考書と言えましょう。

この本の内容は、質問に対する回答となっており、いずれも興味深いです。

若桜木虔著「プロ作家になるための四十カ条」はどんな内容か?

新人賞の選考では、テーマのオリジナリティ、主要登場人物のキャラクター設定の巧拙、
ストーリー展開のハラハラドキドキ度、
読後感のよさ(爽やかさ・感動・結末の意外性やドンデン返しなど)などが、加点の対象となる要素、トータルで百点満点になる。

1 新機軸・斬新さ……三十五点(テーマのオリジナリティ)
2 人物造形……二十五点(キャラクター設定の巧拙)
3 物語展開の面白さ……二十五点
4 動機のよさ……十五点(主人公のモチベーション)

こちらの各項目を総合して七十点が予選通過ライン、八十点が最終選考ライン、九十点
以上の最高得点者が受賞という見当で選考が行われるが、
九十点を超える者がいなければ賞の該当作なし、
もしくは選考作品の中で最高得点を獲得したものが佳作となる。

当然ながら、キャラが立っていれば、シリーズ化される可能性が高く、
漫画化や映画化にもなったりします。
とくに最近の刑事モノでは主人公のキャラ設定によって読者を確保し、シリーズ化されていますね。

小説では以下のような項目が減点対象となる。
1 主要登場人物のキャラクター設定がステレオ・タイプで個性に欠ける。
2 ストーリー展開や主人公の動機づけが、ご都合主義。
3 結末がありきたりで、予想どおりの展開に終わり、意外性に欠ける。
4 視点が主人公に統一されておらず、不自然に乱れ飛ぶ。
5 心理描写が足りず、「……」のみの台詞が多い。
6 台詞回しに工夫がなく、鸚鵡返しの台詞が多い。
7 同一語句を反復使用していたり、形容表現が月並みで独自の言い回しがない。

すべて作者の指摘する通りでしょう。
1から7まで、言わずもがなのことばかり。
ではキャラづくりはどうすればいいのか。何か思いついたら、メモを取ることです。
常日頃から小説のキャラを考えることで、素晴らしいキャラが生まれます(たぶん)。

選考者が求める新人の心意気とは?

選考サイドが求める作品は「前例のない物語設定・前例のないキャラクター設定・前例のない破天荒なストーリー展開」。
新人賞の選考委員が「こうなるだろうな」と予想しつつ読み、
そのとおりに終われば選考では落とされる可能性が大と言える。
よって、展開が予想できたか否かで選考委員の評価が大きく分かれる状況も起こりうる。

受賞の二本柱は主人公のキャラクターと意外性

新人賞を受賞したければ「本選考委員の得意分野では勝負するな」は鉄則となる。

意外性にも二本の柱が存在する。
一つは「先行きを予想させない波瀾万丈のストーリー展開」。
意外性の第二は「知識・蘊蓄(うんちく)」である。
選考する側は、ストーリー展開とは別に、「自分の知らない分野の知識に対して強い意外性を感じる」という側面がある。
エンターテインメント作品の中で選考委員にとって未知の分野についての知識が語られていると、多少は本筋から脱線していても「お、これは面白いぞ!」と感激して高得点を与えることになる。

蘊蓄によって新人賞を受賞した作品はたくさんある。
しかしながら、このての作家の多くは、次回作をあまり見かけません(例外もあります)。
ただ、自分が誰よりも詳しい世界を徹底的に描けば、受賞することもありえるということでしょう。

新人賞を選考する側が応募者に対して求めるのは、
「誰も考えたことのない斬新な舞台設定、前例のない主人公、魅力的な登場人物、奇想天外で意外性に飛んだストーリー展開」の四項目。

常に意識してこの四項目を考えましょう。
つまらない作品を応募したところで、一次予選も突破できませんからね。

小説の本来の目的は、読者を感動させたり、面白くさせたりすることである。
だが、読者が何に感動し、何を面白がるかは、かなり個人差がある。
要するに自分が面白いと思う箇所を念入りに書きこめば、それでよい。
その発想に共鳴する選考委員が多ければ受賞するし、共鳴する読者が多ければヒット作となるのだから。

また、こうも言っています。
1 平凡なシーンで始めない。
2 物語が動き始めるまで説明を挟まない。
3 出し惜しみ構成で読者の興味を引っぱろうと考えない。
4 予想のつくシーンは削り、予想のつきにくいシーンにウエートを置く。

エンターテインメントにおいては「読者に先を読まれないように物語を構成する」ということが鉄則で、
話が短ければ短いほど、この制約は強くなる。

最近のエンターテインメントの新人賞の応募作について、
物語の構成を検討してみたところ、ドンデン返しが少なくとも三回は盛り込まれていないと受賞には至っていない。
ちなみに、ドンデン返しが一回しかない作品は落選、二回の作品は佳作どまりであった。

ドンデン返しが三回?
マジかよ。最近の受賞作を読んでいないのでわかりませんが、古い作品でも確かに二回はドンデン返しがありますね。

梗概の正しい書き方とは?

新人賞などの選考時の応募作品の読み方だが、選考委員は最初に梗概は読まない。
いきなり本文を読み始める。だが、読み進むうちに、大抵の場合「こりゃ駄目だ」と思う。
その場合に、確認のために梗概を見る。つまり、梗概は内容の確認用なのである。

~~(中略)梗概は魅力的である必要など全然ない。
梗概は惹句やキャッチ・コピーではない。あくまでも選考委員に内容を知ってもらうための本文のダイジェスト版なのである。
したがって、ひたすらストーリー展開をわかりやすく書くことが、梗概を作成する上でのポイントである。
本文の内容確認が目的だから、ラストまで書いてない梗概もダメである。

梗概の書き方がわからない方は、参考になる内容でしょう。
ミステリー作品などでも、梗概において最後の結末を伏せたりする人がいます。
これはダメ。すべて書かないといけません。念のため。

他にも、実践のコツがいろいろと書かれていますよ。

(まんぼう)

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