皆さま、こんにちは。
ブックレビューのお時間です。
本日はこの本の紹介です。
ディーン・R・クーンツ著「ベストセラー小説の書き方」(朝日文庫)
ベストセラー作家が書いたものだから、随分と参考になりますよ。
どうすればベストセラーになるのか、どう書けばいいのか。
いや~、クーンツの秘密がわかります。
【どんな本が売れるのか? 超ベストセラー作家が、自作をはじめ、さまざまな例をひきながら、成功の秘密を説き明かす。
何百万もの読者に支持される人気作家ならではの、それ自体が一つのエンターテインメントとなるような計算された好読み物。
巻末に読書ガイド「読んで読んで読みまくれ」添付。】
(解説から)
さて、中身をひもといていきましょう。
「ベストセラー小説の書き方」小説の8つの要素ってなに?
一般に、平均的な読者というのは、小説に次の八つの要素を求めている。
クーンツはそう言っています。
8つとは?
1 しっかりとしたプロット
2 見せ場が多いこと
3 ヒーローかヒロイン、あるいはその両方が登場すること
4 変化と想像力に富み、しかも説得力のある性格描写
5 明確で自然な登場人物の動き
6 綿密な背景描写
7 わかりやすい文章
8 多少のリリシズムと強烈な印象的イメージを豊富に盛り込んだ文体
なるほど、納得です。
悪人は書きやすく、ヒーローは書きにくい、とも言っています。
正真正銘のヒーローを書くことに負担を感じる作家もいるし、純文学界ではヒーローを名作の必要条件とは考えないことが主流となっているけれども、わたしはヒーローこそが、いかなる名作にも不可欠な要素だと信じている。そうも綴っています。
確かに悪人のほうが書きやすいでしょう。
どんどん悪く書いてもいいわけだから、筆も進む。
自分の特定のレッテルをはるのを避けよ
これはどういう意味かというと……。
クーンツはSF作家としてスタートしました。当然、売れたわけですが、そのせいでずっと「SF作家クーンツ」と呼ばれていました。それが気に入らなかったということです。
「SF作家としての経歴がうれしくなかった。作品のほとんどが世間から忘れ去られていたからだ。
出版社からのSF作家と言うレッテルをはられていた。修飾後なしの「作家」として認めてもらうために、
SFのジャンル小説18冊のうち、15冊の版権を買い戻している。特定のレッテルをはられるのも許してしまってはいけないということだ。」
クーンツはそんなふうに胸の内を明かしています。
版権を買い戻すほどに、「作家」になりたかったわけです。すごいことですね。
「ベストセラー小説の書き方」野心的な一般大衆小説をめざせ!
「野心的な一般大衆小説をめざせ」ということも訴えています。
古典的プロットのパターン
成功した小説の大多数が、同じストーリー・パターンを採用している。クーンツはこのパターンを四段階に整理している。
その4つとは?
1 作家は今まさに恐ろしい困難に遭遇しようとしている主人公を紹介する。
2 主人公はその困難を乗り越えようと努力するが、さらに深みにはまる一方である。
3 主人公が穴からはいあがろうとすると、いろいろとやっかいなことが持ち上がる。事態はどんど ん悪化していき、ついに考えつかないほどの困難に巻き込まれ、最悪の事態になる。
4 恐ろしい体験と耐えがたい状況によって、深く傷つき、変貌を遂げた主人公は、自分自身につい て、あるいは人間がつねに置かれている状況について、なにかを学びとる。彼は取り囲まれている危険な状況から抜け出すためには、自分がなにをすべきかをさとる。彼はなすべき行動を実行に移す。
これが古典的なストーリー・パターンです。
1は書き出しですが、これはとても大事。そしてまたこう分析しています。
最初の三ページが勝負だ
ここ数年のあいだ読んだ原稿から判断すると、
新人作家の九九パーセントが、小説の書き出しで同じあやまちを侵している。
それも絶対許されないあやまちだ。彼らは小説をはじめるにあたって、主人公を過酷な困難にほうりこもうとしないのである。
もしも出だしで読者の心をつかむことができなかったとしたら、第一章の終わりまで読者を引っ張っていくことさえできないだろう。
本屋で立ち読みするとき、冒頭を読んで、雰囲気をチェックし、
「おもしろそうだな」と思えば、購入するケースは多いでしょう。
だから1は大事。だらだらした書き出しでは、ベストセラーにはならない。
相次ぐ困難によって主人公を追いつめよ
困難は主人公の状況をさらに悪化させるものでなくてはならない。
どんな困難も、前の事件から必然的に生じるものでなくてはならない。
物語を複雑にするために偶然の一致を用いることは避けるべきだ
相次ぐ困難は決して登場人物の愚かさに起因してはならない。
最後の困難は最悪のものでなくてはならない。
よくわかりますね。
さまざまな困難は、登場人物の愚かさに起因してはならない。これも重要な点です。
結末がおもしろくなければ失敗作とみなされる
それが唯一の必然的なプロットの結末でないかぎり、主人公を戦いに敗れさせてはいけない。
クーンツの作品を何冊か読んだけれども、確かに書き出しから主人公は困難に遭遇します。
だから読者は、「え、どうなるんだろう」と思ってしまう。古典的ではあります。それでも、おもしろい。
このことを常に意識して小説創作に取り組まないといけませんね。
主人公に要求される五つの資質
高潔さ
有能さ
勇気
好感
不完全さ
完全無欠な主人公も好まれないってこと。しかも、最後は戦いに勝たなければいけません。
他にもあれやこれやと書いてあります。
いま、読み返しても、この本は参考になりますね。
(まんぼう)
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