ブックレビュー
王谷晶著「ババヤガの夜」(河出文庫)
皆さん、こんにちは!
最近読んだ本がおもしろかったので、取り上げたいと思います。
王谷晶著「ババヤガの夜」(河出文庫)です。
2025年7月、日本人作家としては初めて、王谷晶(おうたに・あきら)さんの『ババヤガの夜』が英国推理作家協会主催のダガー賞翻訳部門を受賞しました。この快挙は、日本ミステリーの国際的な注目度を大きく引き上げるニュースでした。ダガー賞は1955年創設の“世界最高峰のミステリー文学賞”のひとつに数えられています。
「ババヤガの夜」ダガー賞受賞作!ざっくりストーリー紹介
主人公の新道依子(しんどう・よりこ)は22歳、身体も大きく喧嘩が強いという設定で、決して“美人”とは言えない――実際、「ひでえブスだな」と男性に言われるほどという、意表を突くヒロインです。ある理由から、暴力団・内樹會会長の一人娘・尚子の護衛を無理やり引き受けることになり、物語は暴力と緊張に満ちた逃亡劇へと一気に転がり出します。
「ババヤガの夜」圧倒的な戦闘描写と“血湧き肉躍る”読書体験
レビューサイトや書評では、バイオレンス描写の迫力に多くの言葉が割かれています。例えば読者の声としては、「頭の中で映像となり、作者のトリックにも気持よく翻弄された」といった快感も語られています。
note読者は、「まるでアクション映画を見ている感覚」と述べ、ページをめくる手が止まらないスピード感に舌を巻いたといいます。
また、「血湧き肉躍る」と表現する読者も。依子の潔さや荒々しさ、そして尚子との“シスターフッド”関係の構築にも胸を打たれると語っています。
複雑な関係性、ただの友情でも恋でもない、あいまいな“連帯”
「友情でも愛情でも性愛でもない、ただ深いところで結ばれたこの関係に、名前など付けられない」という言葉が、本作の何よりも独特な魅力を表現しています。
不思議な設定なんですね。
読者にとって、この“ラベリング不可能な関係性”にこそ、この作品の核心があるようです。単なる奮闘譚ではなく、「価値観の押し付けや男尊女卑に対する怒り」がうねりとなって表現されている点にも、多く共感が寄せられています。
巧妙な仕掛けと“二度読み”の快楽
物語の構成には巧みな仕掛けもあり、「二度読んで“そういうことだったのか!”と思う」叙述トリックも仕込まれているとの評価です。レビューには「違和感を覚えながら読み進めていると、本筋とつながって“納得”に至る構造に感服した」といった声もあり、読者に再読の衝動を起こさせますよ。
「読む人を選ぶが刺さる人には深く刺さる」とも。
確かに嫌いな人もいるでしょう。
ヒロインはたいがい美人ですからね。
本作は、暴力描写や荒々しい言葉遣いが苦手な人には辛いかもしれません。ですが一方で、その“粗さ”と“鋭さ”が、本作をただの“暴力アクション”から、痛烈で鮮やかな文学体験へと昇華させているのも間違いありません。
「拳の咆哮轟くシスターハードボイルド」というキャッチコピーは、まさに本書の本質を捉えた表現でしょう。この作品を通して、従来のヒロイン像とは異なる、新たな“強さ”の形を目にすることになるはずです。
まとめ
王谷晶さんの『ババヤガの夜』は、読む人の既成概念を揺るがす衝撃作であり、その「荒れた美しさ」が心に残ります。暴力とともに、名もなき連帯が生まれる世界を体感したい方には、迷うことなくおすすめしたい一冊です。
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