西村寿行「呑舟の魚」呪われた旧家を舞台にした兄弟の死闘を描くバイオレンス長編、衝撃内容!

ブックレビュー

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西村寿行「呑舟の魚」(新潮文庫)

皆さん、こんにちは。
本日は筆者がもっとも好きな作家、西村寿行氏の作品を取り上げます。
読んだのは『吞舟の魚』です。

タイトルに惹かれて購入したものです(古本だけど)。
「呑舟の魚」は、どんしゅうのうおと読みます。
古い言い伝えで、「呑舟」の呪いというのがあるらしく、この呪いをかけられた兄弟の物語。果たして呪いをかけられているのは、兄か弟か。
主人公は弟ですが、兄は非情な男で、2人の確執が想像を絶するのです。

まさにバイオレンス!

西村寿行「呑舟の魚」呪われた兄弟の死闘を描くバイオレンス長編、衝撃内容!

伝説は「血塗られた大魚が吞舟川に姿を見せた年、産まれた子供は反逆の道を歩く」というもの。その年に産まれたのが弟です。

ストーリーのテンポは早く、展開がどんどん変わっていきます。主人公が危機に瀕し、ようやく脱出したかと思うと、すぐにまた危機が訪れるという内容。よくこんな展開を思いつくな、と感心しながら、物語に引き込まれていくのです。

物語は、20年ぶりに郷里に帰ってきた弟(主人公)と、旧家(大富豪)をとりしきる兄との闘いを描いたもの。主人公(平吉)は何度も危機に陥り、まさに死物狂いで一つずつ克服し、兄と闘うのです。
座敷牢に入れられたり、殺人容疑で逮捕されたり、ヘリコプターに乗ったら墜落したり、孤島の洞穴に鉄鎖でつながれたりと、まあ、なんとも、予想外の展開です!

最後は主人公が勝利しますが、完全な勝利と言えません。兄は死亡しますけど、主人公は鎖につながれた足を自ら切り落とすのですから。

プロットの面白さは寿行お得意でしょう。波乱に満ちた物語です!

寿行作品は、たくさん読みました。
最近、この小説を古本で購入し、読んだのですが、とてもよかったです。

西村寿行氏、社会派ミステリーから冒険小説へ

寿行氏の長編第一作は『瀬戸内殺人海流』、社会派推理小説でした。
第二作が『安楽死』、第三作『屍海峡』。

すべて読みましたが、唸るような内容でしたね。筆者は高知県出身ですし、ダイビングもやります。
したがって、どの作品も海が舞台とも言え、一気に読了しましたが、これらは社会派ミステリ-でした。

ここから『君よ憤怒の河を渉れ』や『化石の荒野』など、冒険小説へシフトを切るのです。

「化石の荒野」のあとがき。

「このところ、ぼくは小説の内容を変えはじめた。謎という要素は小説構成の上で大変重要だが、トリックというのが性に合わない。だからそれを冒険に置き換えた。追う者と追われる者、死物狂いで闘う者――それがぼくのテーマである」

寿行作品には動物がたびたび登場します。さらに巨大魚との格闘を描いた作品もあります。それだけではなく、エロス的なバイオレンス小説も多いですね。

『吞舟の魚』でも、性描写がふんだんにあります。これもまた寿行作品の特徴とも言えます。

この作品は、昭和54年新潮社刊。
いくら時代を経ようとも、まったく色あせない名作と言えましょう。

また寿行作品を読み返さなくては。
寿行、凄すぎ!
そう思うくらい、虜になっちゃいますよ!

まとめ

何度も読み返したくなる小説は、そんなにありません。でも、筆者には寿行作品は何度も読みたくなるのです。またご紹介したいと思います。最後まで読んで下さり、ありがとうございました!

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