ブックレビュー
新川帆立著「元彼の遺言状」(宝島社)
皆さん、こんにちは!
今回のブックレビューは、『このミステリーがすごい!』大賞受賞作です。
新川帆立著「元彼の遺言状」(宝島社)です。
文庫本で読みました。
『このミス』は、これまで数々の作品を読みました。優れたエンタメ性に加え、奇想天外な物語が多く、作品に引き込まれて魅了されたり、唸ったりと、そんな作品が多いと思います。
本書もご多分に漏れず。「こんな小説を書けるって凄いな」と思っちゃいましたね。
新しい女性エンタメ作家の仰天小説、感想は?
本書の構成は以下です。
第一章 即物的な世界観
第二章 中道的な殺人
第三章 競争的贈与の予感
第四章 アリバイと浮気のあいだ
第五章 国庫へ道連れ
第六章 親子の面子
第七章 道化の目論見
亡くなった元彼は誰かに殺された!?
犯人だけがその財産を譲り受けられるという奇妙な遺言を受け、
女性弁護士が依頼人と共謀して分け前を狙う破格の遺産相続ミステリーです!
まず遺言の内容。
「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」
はい?なんだ?
いきなりでしょう。
斬新な設定、強烈な主人公、ふんだんな法律知識など、話題を集めるだけの小説だと思います。大賞受賞も納得でしょう。
主人公は丸の内の大手法律事務所で働く女性、剣持麗子。28歳。物語の始まりで、恋人が用意した婚約指輪を安物だとして突き返すのです。まあ、金に並々ならぬ執着を見せる女性なんですね。
書き出しはこんな感じ。
差し出された指輪を見て、私は思わず天をあおいだ。
信夫と私は、東京ステーションホテルのフレンチレストランで、フルコースのデザートを食べ終わったところだった。
「これはどういうつもり?」
レストランのスタッフが花束を用意しているのを見逃していなかった。
信夫は私の驚いた様子を見て、満足そうに微笑む。
「だから、僕と結婚してほし」
「そうじゃなくて」
ガツンと刃を入れるように、信夫を遮った。
「この指輪はどういうつもりって訊いているの」
その後、カルティエの指輪を指さし、指輪が安物だと文句を言うのです。
いやはや、こんな展開は珍しい。主人公のキャラが際立っていますから。
著者の才能がわかりますね。
著者は、16歳で夏目漱石の『吾輩は猫である』を読み、自分も小説書きたいと思ったらしい。やがて2017年に弁護士登録。
それからデビューの3年ほど前から山村正夫記念小説講座、通称「山村教室」に通い始めたと言います。
山村教室は有名ですから。しっかりと小説創作の修業をされたということですね。
この小説は、連続ドラマ化(主演は綾瀬はるか)もされましたね。
読み応えのある小説だと思いました!
1991年生まれ。アメリカ合衆国テキサス州ダラス出身。宮崎県宮崎市育ち。東京大学法学部卒業後、弁護士として勤務。第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、2021年に『元彼の遺言状』(宝島社)でデビュー。他の著書に『倒産続きの彼女』(宝島社)。
(文庫本のプロフィールを引用)
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