「失われた貌」(櫻田智也著)が「ミステリが読みたい! 2026年版」で1位!どんな物語?ネタバレ

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失われた貌」(櫻田智也著)が「ミステリが読みたい! 2026年版」で1位!どんな物語?ネタバレ

皆さん、こんにちは!

ミステリが読みたい! 2026年版」(ハヤカワミステリマガジン2026年1月号)国内篇1位を獲得

作品は、櫻田智也著「失われた貌」(新潮社)でした。

「伏線回収が気持ちいい」「すべての登場人物が立っている」「これぞミステリを読む喜び!」などなど、発売直後から話題沸騰の作品となっています。

テレビ番組「ひるおび」(TBS)でも、取り上げられていましたね。

いったいどんな物語なのか。

「失われた貌」はどんな物語?

短篇集『蟬かえる』『サーチライトと誘蛾灯』等で注目を集めた櫻田智也さん。構想7年、満を持して初の長篇『失われた貌』を発表。緻密な構成と切迫感のある展開で、読者を「一行も読み飛ばしてはいけない」という緊張感で包む傑作です。

ある朝、山奥で顔が潰された遺体が発見されたところから物語は始まる。主人公は、J県警媛上ひめかみ警察署捜査係長の日野雪彦。この事件の直前には、ある人物から、不審者への警察の対応に関する意見の投書がなされていた。さらに、捜査の途中には新たな殺人事件も発覚。様々な出来事が錯綜し、捜査は混迷を極めていく。

書き出しはこんな感じです。

ケトルで湯を沸かしはじめたところにスマホが鳴った。日野雪彦は朝のコーヒーをあきらめた。午前六時五分。火をとめて電話にでる。

「はい。捜査係、日野です」

 通話中に寝室のドアの開く音がした。夜勤明けの妻が入れ違いでベッドに横になったのは、ほんの十五分前のことだった。

「呼びだし?」

「変死体がみつかったらしい」

 死体という言葉を聞く前から、妻は眉間に皺しわを寄せていた。

「あの子のお弁当をお願いするのは無理みたいね」

 今日は土曜日だが、中学三年生の娘は、進学塾が主催する模試を昼食持参で受けにいく。その昼食は雪彦が出勤前につくる約束だった。つまり朝食も。

「すまない。次は必ず」

 妻は黙ってコンロの前に立ち、ケトルの水を鍋に移して火にかけた。寝室でスーツに着替えてキッチンに戻ると、彼女は十枚切りの食パンに粒マスタードを塗っていた。

「じゃあ、いってくる」

以下略。

 櫻田さんの創作の源泉には、古典作品への深い敬愛があるようです。

「私は横山秀夫さんに大きな影響を受けていて、『動機』を読んだときの衝撃は今でも忘れられません。現代日本の警察を舞台に、古典的な手法を取り入れた本格ミステリを書くことができるんだ! と魅せられましたね。横山さんの作品に憧れていた私だからこそ、初めての長篇では、オーソドックスな作品にチャレンジしたいと思っていました。〝顔の分からない死体〟というモチーフは、笠井潔さんの『バイバイ、エンジェル』の影響を受けました。本格ミステリとしての理屈のつけ方がとても面白い作品で、僕にとって古典を理解する上での格好のお手本になりました。一方で、コリン・デクスターの『モース警部』シリーズへのオマージュもしたかったので、当てずっぽうの推理を繰り返していくような場面も入れています」

(WEB別冊文藝春秋2025年8月20日 )

山奥の死体は、自分のお父さんかもしれない――ひとりの少年が警察署を訪れたことで、事件は大きな転機を迎える。読み進めていくにつれ、絡まった糸が少しずつほぐれていくような読み心地は爽快ですが、苦労した点も多かったと言います。

「短篇と長篇ではやっぱり使う筋肉が違いますね。伏線の張り方一つとっても、ヒントの強弱をどのくらいつけたらいいのか、感覚を掴むまでに時間がかかりました。物語の着地点もとても悩みました。最初は今よりも更に登場人物が多かったのですが、収拾がつかなくなって減らしたり、試行錯誤を重ねました」

「執筆の際にテーマを先に考えることはありません。まず推理小説としての筋を決めて、その中で人が動くときの行動原理を考えます。ただ、僕自身50年近く生きているので、人生の落とし穴にはまりかけたとか、はまった経験が色々あるので、自然と〝日常の延長〟のような恐怖が作品にも滲んでいるのかもしれません」

「今野敏さんの『隠蔽捜査』シリーズが好きなんです。捜査の合間に、主人公の家庭の描写が入ることで、一見冷徹な刑事に人間味を感じられるんですよね。僕は外見描写などを通じて人間性を伝えるのがあまり上手くないので、家庭内での描写をすることで、主人公の人となりを出したいと思いました」

「失われた貌」「ミステリが読みたい! 2026年版」で1位!ネタバレ

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山奥で、顔を潰され、歯を抜かれ、手首から先を切り落とされた死体が発見された。不審者の目撃情報があるにもかかわらず、警察の対応が不十分だという投書がなされた直後、上層部がピリピリしている最中の出来事だった。

事件報道後、生活安全課に一人の小学生男子が訪れ、死体は「自分のお父さんかもしれない」と言う。彼の父親は十年前に失踪し、失踪宣告を受けていた。

間を置かず新たな殺人事件の発生が判明し、それを切っ掛けに最初の死体の身元も判明。それは、男の子の父親ではなかった。顔を潰された死体は前科のある探偵で、依頼人の弱みを握っては脅迫を繰り返し、恨みを買っていた男だった。

「失われた貌」ブックレビュー

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山中で顔が破壊され手も切断された死体が発見された。身元確認をすると自宅には新たな死体が。他方10年前に失踪した父親を探す少年が警察に。容疑者は二転三転するが、読み進めると結末は予想がついた。捜査する刑事と同僚の警察官の個性を面白く読みました。話の展開もスピーディーで楽しめました。大満足です。

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主人公の刑事、日野さんはあまりガツガツしておらず…しかし事件に、人に、地道に真摯に向き合う姿勢に好感を持ちました。一見関係なさそうな事柄が引っかかっていき、徐々にギアが上がるように引き込まれていきました。タイトルもいいですね。結末は見事に収まって、でも苦さもあり…お見事でした。魞沢くんのシリーズとはまた違った魅力を感じることができました。またこういった話も読みたいです。

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キャラがなんかどれも中途半端感があって、イマイチ。トリックは考えてんなとは思ったけど、夫の不倫伝えられてそんなにすぐに冷静に切り捨て、指示できるもんかね…

■著者紹介:櫻田智也(さくらだ・ともや)

写真引用:新潮社

1977年生まれ。北海道出身。2013年、昆虫好きの青年・魞沢泉を主人公とした「サーチライトと誘蛾灯」で第10回ミステリーズ!新人賞を受賞しデビュー。2017年に、受賞作を表題作とした連作短編集が刊行された。2021年には、魞沢泉シリーズの2冊目『蟬かえる』で、第74回日本推理作家協会賞と第21回本格ミステリ大賞をW受賞。他著に、『六色の蛹』(いずれも、東京創元社刊)がある。本書は、初の長編となる。

まとめ

本日は櫻田智也「失われた貌」についてまとめてみました。ミステリは好きです。まあ、地ごとの合間を見て読まないといけないけどね。この小説はまだ読んでいませんので、これから読まなくっちゃね。

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