稲垣栄洋著「生き物の死にざま」(草思社文庫)
皆さん、こんにちは!
本日は「生き物の死にざま」を描いた文庫本のご紹介です。
ゾウ、サケ、セミ、カマキリ、タコ……など、生命の最後の輝きを描いています。
哀切と感動のベストセラー、待望の文庫化です!
「生き物の死にざま」哀切と感動!最後の死にざまとは?

生き物たちはみな、最期のその時まで命を燃やして生きているんですね。
数カ月も絶食して卵を守り続け孵化を見届け死んでゆくタコの母、
地面に仰向けになり空を見ることなく死んでいくセミ、
成虫としては一時間しか生きられないカゲロウ、
老体に鞭打ち決死の覚悟で花の蜜を集めるミツバチ……。
いやはや、生き物たちの奮闘と哀切を描き感動を呼んだベストセラーの文庫化です。
最後まで一気に読みましたが、印象的な物語ばかりでしたね。
<目次より>
1 空が見えない最期──セミ
2 子に身を捧ぐ生涯──ハサミムシ
3 母なる川で循環していく命──サケ
4 子を想い命がけの侵入と脱出──アカイエカ
5 三億年命をつないできたつわもの──カゲロウ
6 メスに食われながらも交尾をやめないオス──カマキリ
7 交尾に明け暮れ、死す──アンテキヌス
8 メスに寄生し、放精後はメスに吸収されるオス──チョウチンアンコウ
9 生涯一度きりの交接と子への愛 タコ
10 無数の卵の死の上に在る生魚──マンボウ
11 生きていることが生きがい──クラゲ
12 海と陸の危険に満ちた一生──ウミガメ
13 深海のメスのカニはなぜ冷たい海に向かったか──イエティクラブ
14 太古より海底に降り注ぐプランクトンの遺骸──マリンスノー
15 餌にたどりつくまでの長く危険な道のり アリ
16 卵を産めなくなった女王アリの最期──シロアリ
17 戦うために生まれてきた永遠の幼虫──兵隊アブラムシ
18 冬を前に現れ、冬とともに死す“雪虫”──ワタアブラムシ
19 老化しない奇妙な生き物──ハダカデバネズミ
20 花の蜜集めは晩年に課された危険な任務──ミツバチ
21 なぜ危険を顧みず道路を横切るのか──ヒキガエル
22 巣を出ることなく生涯を閉じるメス──ミノムシ(オオミノガ)
23 クモの巣に餌がかかるのをただただ待つ──ジョロウグモ
24 草食動物も肉食動物も最後は肉に──シマウマとライオン
25 出荷までの四、五〇日間──ニワトリ
26 実験室で閉じる生涯──ネズミ
27 ヒトを必要としたオオカミの子孫の今──イヌ
28 かつては神とされた獣たちの終焉──ニホンオオカミ
29 死を悼む動物なのか──ゾウ
たとえば、9のタコの物語。
「タコの寿命は明らかではないが、一年から数年生きると考えられている。そして、タコはその一生の最後に、一度だけ繁殖を行う。タコにとって、繁殖は生涯最後にして最大のイベントなのである。」
タコって、一生に一回だけの交接なんですね。
カマキリやカブトムシなんかは、何度でも交接しますから。犬や猫もそうでしょう。
人間も同じ。
一回の交接で、オスは死亡。メスも壮絶な人生です。
タコのオスとメスは一回の儀式をゆっくりとゆっくりと行ったあと、オスは力尽きて生涯を閉じます。オスは交接が終わると命が終わるのです。
母ダコはそれからがむしろ大変です。卵を産み、卵が孵化するまで巣穴で育てる。マダコで一カ月、ミズダコは六カ月から十カ月。その間、メスは卵を守り続けます。一切餌を獲ることもなく、卵を抱き続けます。
巣穴を離れると、外敵に襲われるからですね。
卵がようやく孵化し、それを見届けると、母ダコは安心し、死んでゆくのです。
いや~、強烈な生涯でしょう!
著者情報(「BOOK」データベースより)
稲垣栄洋(イナガキヒデヒロ)
1968年静岡県生まれ。静岡大学大学院農学研究科教授。農学博士。専門は雑草生態学。岡山大学大学院農学研究科修了後、農林水産省に入省、静岡県農林技術研究所上席研究員などを経て、現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)まとめ
本日は稲垣栄洋著「生き物の死にざま」を取り上げました。簡単に読めますが、かなりおもしろい内容でしたね。哀切感がひしひしと伝わってきましたよ。おすすめの一冊です。
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